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ふさぶさファームの記録⑤ 中山間とは共同体。

2017.03.31

「ちゅうさんかん」について、教えていただくために訪ねたのは鴨川市役所 農水商工課。
担当職員の方に「ちゅうさんかん」の仕組みについて、一から説明していただくことに。
以下、市役所の担当者の方とのやりとりです。

私「すいません、今年から実家の所有する田んぼで農業をやりたいのですが、どうやらその田んぼが中山間に加入しているらしいのです。私がその田んぼで農業をやる場合、中山間で何が問題になるのでしょうか?」
・・・・・・何もわからない、全くのド素人感満々の質問です。でも、本当に何もわからないので仕方ありません。
担当者「なるほど。全く経験も予備知識もお持ちでないのは良く分かりました。まず、お伺いしたいのは、その農地は今どなたか田んぼをされているのですか?」
私「はい。荒れないように親戚の方にお願いして作っていただいています。」
担当者「なるほど。それでは、今現在は放棄されておらず、稲作をされていらっしゃるということですね。となると、あなたが農業をやりたいとすると、田んぼ、すなわち稲作を行う    ということでよろしいですね?」
私「いえ、今年はとりあえず土壌改良の目的もあり、稲作ではなく大豆と麦をやろうと思います。ただし、来年もしくは再来年に田んぼにする、稲作を前提です。」
担当者「大豆…?大豆ですか?となると畑ということになりますよね?それは困りますね。すでに、中山間の交付金をお支払いしているのですから」
私「では、それを返金すれば良いのですか?」
担当者「・・・あのですね。中山間地域等直接支払制度の交付金とは、一世帯だけの問題ではないのです。その地域全体、集落全体にかかわる問題なのです。国からの交付金は、個人にではなく、その集落全体に交付されるものです。その交付金は、「田」「畑」「草地」「牧草放牧地」の地目ごとに単価が定められており、その単価に基づいて交付金が支払われます。その地目の申請は、5年毎に更新されますが、その5年間の間は申請した地目で農地を管理しなければならないのです。」
私「え?!自分の土地なのに、自分の都合で作物を変更したり、やめることもできないのですか?」
担当者「そうです!それが中山間の仕組みなのです。個人ではなく、集落全体でその地域の土地を維持管理するという取り決めなのです。仮に、今回仰っているように個人の都合で田んぼから畑に変える、という場合は、集落全体の加入者の方々から承認を得ていただき、且つ行政に対して、集落全体の問題として説明していただくような場を設けないとならなくなると思います。」
私「・・・なんだか、正直大変ですね。。。じゃあ、今年から交付金はいらないので脱退するということはできますか?」
担当者「ですのでー、個人の好きにはできなのです。脱退については、一旦申請したら、基本的に5年間は受け付けられません。」
私「次の更新期まで抜けることもできないのですか。。。」
担当者「そうです。個人の問題ではないからです。そのために国からの交付金をお支払いして、地域の農地の維持管理を集落の皆様が責任を持って管理していただかないとならないのです。仮に、そのうちの1軒でも申請した地目で農業生産活動がされていないと見なされた場合は、その1軒だけではなく、集落全体の交付金を過去にさかのぼって強制的に返還していただかないとなりません。」
私「ええーー!連帯責任ということですか?!江戸時代の隣組みたいな。」
担当者「そうです。ですので、互いに監視(!)し合う、見守り合うことが大事になるのです。そういう仕組みなのです。個人ではなく、集落全体が運命共同体である(!)という前提に基づいた仕組みなのです。」

・・・・・・なるほどー、そういった前提であれば、隣近所の方たちが、うちの田んぼについてあれだけナーバスになるのも良く分かります。中山間に入っているということは、個人が所有していながらも、集落全体の責任のもと管理しなければならないということなのです。これまで田んぼだった農地を、きまぐれに畑にするとか、大変だから今年は止めるとか、いうことはできない。個人ではなく、共同体の中の一員として役割を果たさなければならないということを、ここでようやく理解できました。

「ふさぶさファーム」の田んぼの候補地となっていた、実家から一番近く大きさも手ごろな田んぼは、地域の中山間に入っているため、ふさぶさファームが計画している大豆、麦を栽培しながら土壌改良と土地の観察を重ねたうえで、約3年をかけて「耕さない田んぼ」にする、というプランを実現するのは、中山間の枠組みに入っている限りはかなりハードルが高そうです。

里山で田んぼをやるということが、どのような意味を成すことなのか。
田舎の土地は、都会の住宅やマンションのような単なる不動産ではない。
個人が所有していながらも、それは地域の共有財産であり、周囲との協働と調和が前提にあるからこそ
それぞれの暮らしが守られる。

「ふさぶさファーム」を立ち上げるにあたり、自分自身は「地域」の視点が欠けていたのではないか、
自分自身のことしか、考えていなかったのではないかと、
改めて考えさせられた日でもありました。

この日のことを、帰ってから「ふさぶさファーム」の指導と監修をお願いしている五十嵐さんに相談。
候補地となっていた実家から近い田んぼで、「耕さない田んぼ」にすることを前提にした大豆や麦の栽培は、中山間の枠組みの中で行うには、地域の皆様にご迷惑をお掛けしてしまう可能性がある、という結論になり、改めて候補地の田んぼを探すことにしたのでした。